これまでの記事で様々な分野におけるVR活用の取り組みを取り上げてきました。今回の記事ではアートの分野におけるVRがどのように使われているかについてまとめてみたいと思います。
※スペースリーの展示場VRのサンプル。VR内に商品ページのリンクはもちろん、画像・動画・商品説明の埋め込みも可能です。
英国王立美術アカデミーは中国人現代アートの巨匠アイ・ウェイウェイ(Ai Wei Wei)の展覧会をVR化し、オンラインで公開しています。
Photo from The Royal Academy of Arts (GB) website
各展示を360度写真に収めており、360度パノラマコンテンツとしてみることも可能ですが、スマホとGoogle Cardboardなどのヘッドセットがあれば、二眼VRモードで展示を見て回ることができます。
さすが美術館が作ったコンテンツだけあって、画像の美しさ、アイコンなどのインターフェースのおしゃれさには目を引くものがあります。
VRモードの場合は視線の先にカーソルがあり、そのカーソルを対象物に合わせるとクリックと同じ動作となり、別の展示に移動したり、詳しいキャプション情報を見たりすることができます。
また、こちらのコンテンツの場合は、360度パノラマモードとVRモードでインターフェースを若干変更しており、PCやスマホで360度パノラマコンテンツとして鑑賞する場合は、キャプションのアイコンをクリックすると画像付きで詳細情報が出てくるのですが、VRモードの場合は音声のみの情報が流れるようになっていました。
筆者が、東京にいながらにして、ロンドンで行われているアイ・ウェイウェイの展覧会を鑑賞することができたように、リアルに行われている展覧会をVR化することで、遠隔地にいるために展示を見に行けない人も、オンラインで鑑賞することができるようになります。
また、VRコンテンツとしてアーカイブしてしまえば、開催期間中に見に行けなかった人も、VR体験を通じて追体験をすることができます。
つまり、展覧会をVR化することで、空間的制約、時間的制約を取り払うことができると言えるでしょう。
また、VR化するコストもどんどん下がってきています。一般的に流通している360度カメラとVRコンテンツ制作ソフトを使用することで、コストをあまりかけずに展覧会をVRコンテンツとしてアーカイブすることが可能になりました。
リアルに行われた展覧会をVR化するのではなく、作品自体をVRの技術を使って制作し、表現するという取り組みも見られています。
写真家の沢渡朔と野村佐紀子は、2017年1月24日〜29日に新宿NEWoManでPhoto VRという展示を開催します。
二人ともキャリアの長い写真家ですが、今回の展示のために360度カメラでの撮影を行い、VRで表現するための作品作りに挑戦しました。
写真:沢渡 朔
写真:野村佐紀子
参考:VRアート企画展示『Photo VR』を振り返る① ー 女性向けファッションビルでのVRイベント
30分で解説!360度カメラの選び方・撮影のポイントを1つの冊子にまとめました。資料ダウンロードは「5000事業者以上へのVR導入実績!事業者向け、360度カメラの選び方と効果的な撮影方法」よりお願いします。
また、ソニー・デジタル・エンタテインメント・サービスは、昨年VR Galleryという、VRアート専門のギャラリーを東京都杉並区の阿佐ヶ谷にオープンしました。
Photo from the VR Gallery website
ここではHTC Viveを使って、VR空間に制作されたアートを鑑賞、体験することができます。
また、ウェブサイト上では、2017年1月23日時点で6人のアーティストの作品がダウンロードできるようになっており、HTC Viveユーザーであれば、自宅に居ながらにして作品を鑑賞することができます。
作品は、Googleが開発したTilt Brushという、3D空間に絵を描くことができるソフトを使って制作されています。Tilt BrushはHTC Viveのゲーム配信プラットフォームであるSteamで2980円で販売されています。
展覧会のアーカイブというのは、数がたまっていくと非常に価値が出てくるのではないでしょうか。展覧会は置いてある作品だけではなく、展示の手法、展示空間もアートと言えるものが多くあるため、空間的制約、時間的制約を取り払って、アートの鑑賞体験ができるようになることには社会全体にとって価値があることだと思います。
また、VRを活用した表現については、まだ始まったばかりの分野です。しかし、これまでの鑑賞するというところから、体験するというところには大きなジャンプがあり、これからどのように発展していくのかが非常に楽しみですね。
参考リンク:
VRの活用例や活用方法についての記事一覧
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