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スマホVRの観点からのVR元年2016年のレビューと今後の展望 

2016年はVR元年と呼ばれ、リコーシータSCなどの360度カメラ、GoogleのDaydream ViewなどのVR用ヘッドセット、プレイステーションVRなどの、VR再生用コンピュータなど、様々なVR関連製品の新商品が市場に投入されました。
また、米国の投資銀行のゴールドマンサックスは2025年までにVR/AR市場が950億米ドル(2016年の市場規模は32億米ドル)まで拡大するというレポートを発表し、注目を集めました。

VR市場規模
出所:ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント

GoogleによるEyefluence(視線トラッキング技術の開発会社)の買収、IntelによるReplay TechnologiesやVoke(いずれもVR動画関連技術のベンチャー企業)の買収、OculusによるInfiniLED(低電力LED技術のベンチャー企業)など、大手IT企業によるVR関連の投資、買収のニュースも多く見られました。
一般事業会社においても、さまざまな業界において、VRを活用したプロモーションが行われるようになったほか、不動産の内見や、企業の研修、医療分野など、ビジネス用途でのVR技術の活用も普及し始めました。
一方で、VRの技術自体は新しいものではなく、1960年代までさかのぼります。
なぜ2016年がVR元年と呼ばれるようになったのか、OculusやプレイステーションVRなど、ハイエンドなVRの分野は他でも多く触れられているので、ここでは、スマホVRという手軽な分野に主にスポットを当てて、その背景と、VR市場の現状、今後の見通しについて書いてみたいと思います。

技術の進歩と低価格化

スマートフォンの機能高度化と普及

まず第一に上げられるのが、高度な機能を持ったスマートフォンを誰もがあたりまえのように持つようになったことです。以前の記事でもお伝えしましたが、スマホVRを視聴するためには、ウェブブラウザ上でVRコンテンツを再生するための標準仕様であるWebGLにスマホが対応している必要があります。WebGLに対応しているのは、iOS8以降、Android4以降のスマホであり、現在では98%以上のスマホが対応していると考えられます。したがって、一般消費者がスマホVRを視聴するためのインフラが整ってきたといえます。

360度カメラの進化と低価格化

次に、高画質の360度カメラが手軽な価格で入手できるようになりました。2015年の10月下旬に、出力画素約1400万画素のRicoh Theta Sが発売され、その後SamsungのGear360、LGの360Cam、NikonのKeyMission360と、数万円台で購入可能な高画質の360度写真や360度映像がかんたんに撮影できる360度カメラが次々と市場に投入されました。Ricoh Theta S発売前の360度カメラといえば出力画素約600万画素のRicoh Theta m15しかなく、高画質の360度写真を撮影するためには、高額な機材を使用して、複雑なスティッチング(写真をつなぎ合わせること)の作業を行う必要がありました。
Ricoh Theta S以降、各社から発売されている360度カメラは、いずれもGoogleストリートビューの基準である1400万画素を超えており、VRモードで閲覧しても十分な画質です。360度画像や360度映像の撮影が手軽になったことで、撮影ベースのVRコンテンツを制作するコストは大幅に低下しました。

参考:360度撮影をするための3つの方法と必要なコスト

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写真:RicohのTheta SとTheta SC

VRヘッドセットの低価格化と多様化

2014年にGoogleはGoogleカードボードの設計図を公開し、低価格のVRヘッドセットが市場に出回るようになりました。2015年にはGoogle Cardboard Ver.2の設計図が公開され、その後、中国企業などが低価格の紙製や段ボール製やプラスティック製のVRヘッドセットを大量に生産するようになり、それなりのクオリティのVRヘッドセットが低価格で入手できるようになり、スマホVRを高画質で楽しむためのコストは一段と下がりました。

参考:スマホ用VRのヘッドセットの選び方〜1000円カードボード編〜

一方で、プレイステーションVRの発売など、エンターテインメント分野のハイエンドなVRもより身近になり、Googleが今年発売したDaydream ViewやGearVRなど、いわばミドルエンドのVR機器においても新製品が出てきていることで、VR体験をするための選択肢が、手軽なものからハイエンドなものまで増えてきました。
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写真:Daydream View

オンライン高速化と体験型消費の増加

モバイルオンライン環境の変化

前述した通り、スマホが幅広く普及したことにより、消費者はいつでも気軽にオンラインで情報に触れることができるようになり、消費者がインターネットにアクセスするのはPCではなく、スマホが中心になってきました。また、SNSによる情報の拡散など、オンラインの情報が溢れる中で、消費者に効果的に訴求することが、これまでのテキスト情報や画像だけでは難しくなってきました。
そのような環境の中、企業の消費者へのコミュニケーションにおいては、より直感的に訴求する動画などのリッチコンテンツが増加してきました。リッチコンテンツがあたりまえになる中で、より新鮮な、目を引く訴求ツールがますます求められるようになり、企業によるVRコンテンツを活用したプロモーションは増えてきたといえるでしょう。

体験を求める消費者

食料品や衣料品などの日常的な消費に関しては節約志向が目立つ一方で、旅行やライブ、映画などの体験型の消費が増加するのがトレンドとなってきています。エンターテインメントの分野においては、テーマパーク、家庭用ゲーム、映画、ライブなど、VRコンテンツの導入によって、これまでにはない体験を消費者に提供しようという動きが出てきているといえるでしょう。

まとめ

技術的な進歩、社会的な背景の両面からVR普及の土台は整ってきており、そのような意味において2016年はVR元年であったといえるのかもしれません。一方で、VRコンテンツ、VR技術はまだまだ発展途上であるため、多くの課題も抱えています。

粗悪な製品、コンテンツ

VRが流行っていることもあり、とにかくVRを活用したいという向きもあるのかもしれませんが、イマイチなコンテンツもたまに見受けられます。コストの問題もあるのかもしれませんが、粗悪なレンズのついた紙製のゴーグルを無料で提供しているものや、たいした内容も無いのに、わざわざ専用アプリをダウンロードさせて見せようとするコンテンツなどで、イマイチなVR体験をした消費者はむしろVR嫌いになってしまうリスクすらあります。
どのようなVRコンテンツを発信するのが効果的なのか、発信する側の企業は今後学んでいく必要があるといえるでしょう。

通信インフラ、スマホの処理能力

以前に比べると通信インフラ、スマホの処理能力は格段に改善してきてはいますが、VRコンテンツがあたりまえのように流通するにはまだ十分とはいえない状況です。静止画のVRコンテンツならまだしも、VR動画は非常に重いために、高画質のコンテンツを気軽にスマホで鑑賞できる環境は整っていません。通信インフラとスマホの処理能力の更なる向上が期待されます。

2017年の展望

2016年は多くのVR関連の新製品が発売され、多くのVRコンテンツも見られるようになってきましたが、実験的でこなれていない部分も多かったといえるでしょう。
今後はVRの物珍しさは薄れていきますし、消費者のVRコンテンツを見る目もますます肥えていきます。
2017年は、技術的な改善、進歩がさらに進む一方で、コンテンツ制作者、発信者が、VRならではのコンテンツ、VRならではの有用な情報を消費者に向けて発信していけるかが試される年になるかもしれません。

参考リンク:
VRの基礎知識についての記事一覧
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